阿弗利加の犬思い出のイヌ タンザニア在住中に、僕はいろいろな動物を飼っていた。 ヤギ、ブタ、ニワトリ、アヒル、七面鳥。 そう彼らは、ぼくらの食卓を彩るために飼われていました。 でもその他に飼っていた動物もいます。かといって愛玩動物ではない。 ちゃんと彼らも任務を持っていたんです。 イヌ、ネコ、カメレオン。 カメレオンは、飼っていたとはいえないかもしれません。ただ家に居ついちゃっていただけだし。でも彼らは虫を食べてくれる、非常に役立つやつらだった。 ネコも、同じ感じだ。ねずみを取るためにいついていた。 そしてイヌ。 俺の友人のタンザニア人が飼っていたこのイヌ。 名付け親は俺なんだけれども。 名前をサクラと言う。 サクラはメスだったので、俺が避妊手術を施したんだけれども。 こいつ、普通にそこらにいる犬と違ってちょっと変わった趣きがあったのだ。 それは。 サクラの瞳は、まるで白人のように青い瞳をしていたのだ。 と言う事で、周りからはムズングのイヌ(白人のイヌ)と呼ばれていた。 別に忌み嫌われるどころか、どちらかと言うとその変わった容姿がタンザニア人うけしたらしくて、人気者だった。 ↑ 写真はまだサクラがちっちゃい頃のもの。 写真だと思ったほど瞳が青くないんだけれども。 本当はもっと青いんだよ。 そんな俺もタンザニアに住んでいたとき、犬を6匹飼っていた。 『飼っていた』というよりは『適当にそこら辺にいた』と言うほうが正しいかもしれない。 毎日のごはんはちょこっとしか、しかも一日一回しかあげていなかったから、みんな足りない分は自分でハリネズミを捕獲したり、畑を荒らしたりして自活していた。 その6匹のうち5匹は『バセンジー』と言うアフリカ原産種だ。 日本で一匹40万円で売られていた事もあるから驚きだ。つまり俺は40万円×5頭=200万円を適当に飼っていた事になる。 ちなみにこいつらのママ(コブラに噛まれて死亡)を俺はタンザニア人から500Tshで購入したんだけどな。 バセンジーの特徴はほとんど吠えない事。 そりゃぁ叩けば『きゃんっ』と鳴くし、けんかすれば『ぐるるる』ってうなるけど『わんっわんっ』とは吠えない。 そんな事もあってか日本の住宅事情にはお似合いのイヌだがこいつらは獰猛なんだ。 『犬種図鑑』なんかを読むと「『バセンジー』とはスワヒリ語で『野犬』を意味する言葉です」なんて書かれているけどそれは間違いだ。『Basenji』とはたぶん『Wasenji(野蛮)』から派生した言葉だと思う。 そしてスワヒリ語ではなくコンゴのリンガラ語だと思うんだけどな。 さて、この野蛮なやつら。 実は固有名詞が定かではない。 なぜならば。 俺が適当にしか呼んでいなかったからだ(笑) 彼らのママには名前をつけていた。クロだけど(汗) それで、クロはコブラにかまれて死んじゃったんだ。 ちょうどクロが死ぬ2~3日前に、生まれたのがこいつらだ。 俺はちょうどその頃、出張でブッシュに行ったっきりで。 ママに死なれた、このててなし子たちを。 ママドミナを始めとする、近所の人たちが。 ストローに牛乳を入れて、ちゅうぱちゅうぱ吸わすようにして、飲ませて育ててくれたそうだ。 そんな事は露知らず。俺のこいつらに対する態度は冷たいもんで。 でも、なんだかんだ言って立派に育ったなぁ。 やつらの名前は、一応考えていたんだけれど。 それは、ディモス、ガリィ、チュイ、シンバ、ポピーだ。 チュイとは、スワヒリ語でヒョウを意味する。 シンバは、スワヒリ語でライオン。 これはタンザニアで犬に名づける最もオーソドックスな名前だ。 そして、ポピー。これもなぜかタンザニア人がよくつける名前。 という事で、この三つは、自然に却下されてしまった(笑) 日本人が飼っているのに、そりゃぁないだろうというご近所の意向だ。 そしてガリィ。 これはとある漫画から取ったもんなんだけど。 いつの間にか却下(笑) 最後に残ったのは、ディモス。実はこれは俺がつけたのではなく。 近所のちびっ子がつけたのだった。 当初意味がわからなかったけど。 ディモスって、『悪魔』を意味するそうじゃないか。 縁起でもねぇと思ったけれど。 よく考えれば、それはキリスト教側の視点から捉えたものであって。 そんな悪魔の犬を飼っていれば、充分な魔よけになるってもんだ。 ゴダイの死後、こいつらは繁栄しまくって。 ゴダイは死んじゃったけど、ゴダイの名は滅びずに、こいつらの誰かが受け継ぎ。 ゴダイ、クロ、ディモスのどれかの名前で呼ばれるようになった。 そうさ、彼らに名前なんて大きな意味はない。 今でも、平和に家の回りをうろうろして、ご近所を騒がせ、平和にやっていることだろう。 ↑ 写真は、家の前でくつろぐ、そんな野蛮なやつら。 まあそんな野蛮なやつらはおいといて最後の一匹を紹介しよう。 バセンジーではないそいつは、俺がくるずっと前から住んでいたんだ。 ずーっと前にこの地に住んでいた日本人が飼い始めたらしい。 そしてやつは、その日本人が帰った後タンザニア人と仲良くしながら新しい主人の登場を待っていたんだ。 年齢は16歳。こりゃびっくり。 イヌの寿命を人間の寿命に換算すると、単純計算で。 (イヌの年齢)×5+10=人間の年齢に換算されたイヌの年齢 てな具合で出る。と言う事はやつは90歳だ。 大型犬より小型犬のほうが長生きするもんだが、やつは大型だった。 更に過酷なアフリカの地で生きていると言う事を考えると、平均寿命が46歳くらいのタンザニア人世界では、こいつはひょっとして200歳を軽く越しているんじゃないのか? まるで妖怪か仙人もとい仙犬だ。 きっと人生の中でいろんなものを見、そしていろんなことを体験してきたに違いない。 やつの名はゴダイ 俺のご近所でゴダイを知らない者はいなかった。 風貌は秋田犬チックのこの老犬はのんびりとそしてのっしのっしてな感じでご近所を徘徊、いやもとい巡回していたんだ。 さすが日本人に飼われていただけあってゴダイはバイリンガルだ。 日本語で『待て』と言ってもスワヒリ語で『Subiri(まて)』と言っても理解していた。 まぁ長く生きてりゃ獣も人語を解せるようになると言うやつなのか。 そんなゴダイだったんだけど、さすがにご老体だったんだろう。残念ながら俺の滞在中にやつは亡くなった。 死因はもちろん老衰って事だ。 タンザニアでは、人間でさえちゃんとした寿命を全うする事ができない場合が多い。 それゆえ、平均寿命が短くなってしまうんだ。 だからやつは大往生だったんだろう。 日本人に飼われ始め、そして最後に日本人に看取られたやつは幸せだったんだろうか? 16年間いろんなタンザニア人やら日本人やら、そしてそいつらのやり取りを見てきたやつはちょっとした生き字引だったんだ。 きっとゴダイが喋れていたら大変だろう。 『昔な、こういうムジャパニがいてな。悪さしてたんだぞ。』てな感じで後ろめたい方もいるに違いない。 ゴダイは、獣に墓を作る習慣のないこの地で、タンザニア人の手によって葬ってもらった。しかも花まで添えてくれたんだ。 それだけ、人間から親しまれていたんだな。やつは。 実はそんなゴダイが枕元にたった。 別にうらめしぃ~ってな感じではなく、俺が昼寝している横で一緒になって寝そべっている夢を見た。別に怖くもなく、やつもこの世に未練があるって感じじゃなかったんだけど。 やけにリアルな夢だったんだ。 ひょっとしたら、奴は俺の守護霊になっているのかもしれない。 と言うわけで、ゴダイの供養のつもりです。 写真は木陰でのんびりするゴダイとちびっ子イヌ。 『ライオンと戦う犬』 アフリカで診察した患者さんたちには。 いろいろ恐怖の患者さんたちが多かったんだけれども。 カラカルや、サーバルキャットなんかよりも恐ろしい患者がいた。 それは別に珍しい動物ではないんだけれど。 実は犬なのだ。 アフリカの犬は、結構気性が激しい輩が多いんだけれども。 その中でも『ローデシアン・リッジバッグ』と呼ばれる犬は、俺が知る限り。 世界最強かつ最凶の犬だと思う。 その最強さは、土佐闘犬や、アメリカンピットブルなどの闘犬をあっさりやっつけ。 その最凶さは、ヤクザもたじたじだと思う(笑) ローデシアン・リッジバッグ。別名を『ライオンハンティングドッグ』と呼ばれるこの犬は。 その名のとおり、起源はよく知らないけれど。 アフリカの犬なのだ。 この犬の特徴として、背中の毛が『逆毛』なんだな。それがなんでかは知らないけれど。 きっとチャームポイントだ。 この犬はおそらく日本じゃ見られない、アフリカ原産のアフリカの犬なのだ。 ただし、飼い主はアフリカ人ではなく。 アフリカ在住の白人の方々が多い。 何しろ、ライオン狩りに使うくらいの猟犬だからね。 俺の知る限り。 ライオンとタイマンはって勝てる生物は。 マサイとこの犬だけだろう(笑) そんな犬を診察した事があるんだけれども。 めっちゃ怖かったですよ、はい。 まず、でかい。 立ち上がったら、俺よりも確実にでかい。 そして、めっちゃ凶暴。 何しろ、ライオンとタイマン張らなきゃいけないんだから、それはそれは気性が激しいのです(笑) ↑ 飼い主さんに押えてもらってやっと撮れた写真。思いっきりメンチきってます(笑) 背中の『逆毛』がちらっと見えます。まさに龍の逆鱗に等しい逆毛。 こいつの治療は、ただの狂犬病の注射だけだったんだけど。 すでに狂犬なのだ。 よっぽどカラカルの治療のほうが楽だった。 もう隙あらば、俺を殺しにかかってこようとしていたのだ。 飼い主さん(白人の牧師さん)が一生懸命抑えてくれては痛んだけれど、何しろでかくて力が強い。 常に、『われ、なにさらしとんのじゃっ、やるんかっおぅ』てな感じで、飼い主さんが制止しているにもかからわず。 そして、まだ俺が何もしていないにもかかわらず。 もうね、向こうは一方的にやる気満々だったのだ(笑) 診療所のスタッフと一緒に行ったんだけれども。 『ドクター、吹き矢使おうよ、あいつには』なんて言い出す始末。 ※ :野生動物や通常飼い主さんも抑制できないような動物で、好戦的な方には、吹き矢を使うときがあります♪ でも、どうにか飼い主さんが馬乗りになって押さえつけ。 お尻に、ぷすっ。と注射は出来た。 でもその最中も、飼い主さんが食い殺されるのではと思われるほどのうなり声を上げており、本当に怖かった患者さんだった。 まさか、日本人は飼わないよな(笑) もし動物病院なんかに連れてきたら、俺は迷わず次は吹き矢を使っちゃうよ♪ ※:もっと早く掲載したかったんだけれども。 この写真を撮った頃はデジカメなんてしゃれたものがなくて、ネガフィルムだったのでその写真を探すのに一苦労していたのです。 |